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創業の基礎知識(法人編)/効果的な節税対策

賃上げで法人税が安くなる!中小企業向け賃上げ促進税制2026の使い方

「従業員の給料を上げたいけれど、その分の負担が重い」——広島市内でも、人手不足のなかで賃上げに踏み切る中小企業が増えています。実は、一定の条件を満たして賃上げを行うと、増やした給与の増加分の一定割合を法人税(個人事業主は所得税)から差し引ける賃上げ促進税制」という制度があります。

ただしこの制度は2026年(令和8年)に内容が変わり、中小企業の控除率は最大35%になりました(2026年3月までに開始する事業年度なら最大45%)。本記事では、改正後の仕組み・控除率・計算方法・注意点を、広島市安佐南区の吉村税理士事務所が実務目線で解説します。

 

賃上げ促進税制とは?2026年に中小企業が使える節税制度

賃上げ促進税制とは、従業員の給与を前年より増やした企業が、その増加額の一定割合を法人税(個人事業主は所得税)から控除できる制度です。根拠は租税特別措置法第42条の12の5(個人事業主は第10条の5の4)に定められています。

ポイントは「賃上げのために増えた人件費がそのまま負担増になるのではなく、一部が税金で返ってくる」という点です。

いつまで使える?適用される事業年度

中小企業向けの賃上げ促進税制は、令和9年3月31日までに開始する事業年度(個人事業主は令和9年分)まで利用できます。ただし後述のとおり、2026年(令和8年)4月1日以後に開始する事業年度から控除率の上限が45%から35%に下がります。決算月によって「どちらの区分に当たるか」が変わるため、自社の事業年度の開始日で確認してください。

対象になる「中小企業者等」の範囲

ここでいう中小企業者等とは、青色申告を提出する資本金1億円以下の法人や農業協同組合等、または従業員数1,000人以下の個人事業主などを指します。ただし、大規模法人から一定割合以上の出資を受ける法人や、前3事業年度の所得金額の平均が15億円を超える法人は対象外です。広島市内の多くの中小企業・個人事業主が対象になり得る制度です。

 

中小企業の控除率と要件【2026年4月以降は最大35%】

2026年(令和8年)4月1日以後に開始する事業年度の中小企業向けは、賃上げ要件(必須)+子育て・女性活躍の上乗せで構成され、すべて満たすと控除率は最大35%になります。

区分 要件 税額控除率
必須要件(賃上げ要件) 全雇用者の給与等支給額が前年度比 +1.5%以上 15%
必須要件(賃上げ要件) 全雇用者の給与等支給額が前年度比 +2.5%以上 30%
上乗せ(子育て・女性活躍) くるみん以上 または えるぼし二段階目以上の認定を取得 +5%
最大 35%

控除額は「給与等支給額の増加分 × 控除率」で計算します。

賃上げ促進税制_控除率の積み上げ図_2026年4月以降

 

必須要件:給与総額の増加率で15%〜30%

ベースとなるのは、全雇用者の給与等支給額(従業員に支払った給与の総額)が前年度よりどれだけ増えたかです。+1.5%以上で15%+2.5%以上なら30%を、増加額に対して控除できます。

対象は「一人ひとりの給与」ではなく「給与の総額」である点に注意しましょう。昇給だけでなく、新規採用で総額が増えた場合も含まれます。なお、役員やその親族など特殊関係者に支払う給与は、この給与総額には含みません。

上乗せ:くるみん・えるぼし認定で+5%

子育てサポート企業の「くるみん認定」(以上)や、女性活躍推進の「えるぼし認定」(二段階目以上)を受けている場合は、控除率が5%上乗せされます。認定の種類や取得のタイミングによって細かな条件があり、たとえばくるみん認定は令和4年4月1日以降の基準を満たしたものに限られます。詳細は厚生労働省・中小企業庁の資料でご確認ください。

 

【2026年3月まで】教育訓練費の+10%上乗せは廃止されました

従来の賃上げ促進税制には、社員研修などの教育訓練費を前年度より5%以上増やすと控除率が+10%上乗せされ、最大45%になる仕組みがありました。しかしこの上乗せは令和8年度の改正で廃止されました。適用できるのは、次の期間までです。

  • 法人:2026年(令和8年)3月31日までに開始する事業年度
  • 個人事業主:令和7年分・令和8年分

そのため、2026年4月1日以後に開始する事業年度(多くの3月決算法人でいえば令和9年3月期以降)では、中小企業向けの控除率は最大35%になります。内訳は「賃上げ要件で最大30%(+1.5%で15%、+2.5%で30%)+認定で5%」です。

 

控除額の計算例|広島の中小企業でシミュレーション

2026年4月以降に開始する事業年度(最大35%)のケースで、具体的に見てみましょう。

【例】広島市安佐南区の製造業B社(従業員12名・3月決算)

  • 前年度の給与総額:2,400万円
  • 当年度の給与総額:2,472万円(+3.0% / 72万円の増加)

給与総額が +2.5%以上 → 控除率30%(認定は未取得のため上乗せなし)

控除額 = 増加額72万円 × 30% = 21万6,000円

仮に法人税額が200万円であれば、控除の上限は法人税額の20% = 40万円。21万6,000円は上限以内のため、全額を控除できます。

賃上げを行ったうえで、法人税が約22万円安くなる計算です。

※このB社が2026年3月までに開始する事業年度で、かつ教育訓練費の要件も満たしていれば、廃止前の制度で最大45%(この例では控除率40%=約29万円)が使えました。(賃上げ30%+教育訓練費10%=40%、認定なしの場合)

 

中小企業は「中堅企業向け」も選べる|継続雇用者の賃上げが大きいとき

あまり知られていませんが、中小企業は、要件を満たせば「中堅企業向け」の制度を選んで使うこともできます。中堅企業向けは、判定の基準が「全雇用者」ではなく継続雇用者」(前年度・当年度を通じて在籍する従業員)の給与で、控除率は次のとおりです。

継続雇用者の給与等支給額(前年度比) 税額控除率
+4%以上 10%
+5%以上 15%
+6%以上 25%
上乗せ(プラチナくるみん または えるぼし三段階目以上) +5%(最大30%)

中小企業向け(全雇用者ベース・最大35%)と中堅企業向け(継続雇用者ベース・最大30%)は、判定に使う給与の範囲が異なるため、どちらが有利になるかは会社ごとに変わります。継続して在籍する社員の賃上げ率を高く出せる会社では、両方を試算して有利な方を選ぶ価値があります。判断に迷う場合は税理士にご相談ください。

 

【2024年改正】赤字でも使える「5年間の繰越控除」

賃上げ促進税制には「赤字の年は法人税が発生しないため、せっかく賃上げしても控除を使えない」という弱点がありました。これを補うのが、中小企業に認められている繰越税額控除制度です。控除しきれなかった金額を、翌年度以降5年間にわたって繰り越せます。

「今期は赤字でも賃上げは実施し、黒字化した将来の年度で控除を受ける」という使い方ができるため、創業期で先行投資が重なりやすい広島のスタートアップにとっても見逃せないポイントです。

※繰り越すには、未控除額が発生した年度の申告で明細書の提出が必要です(2年目以降に繰り越す場合や、黒字化して繰越控除を使う年度も明細書の添付が必要)。また、繰越控除を使う年度は、その年度の給与総額が前年度より増加していることが要件です。

賃上げ促進税制を使うときの3つの注意点

  1. 控除には上限がある
    控除できるのは法人税額(所得税額)の20%まで。賃上げ額が大きくても税額が小さいと使い切れない場合があります(そのための繰越控除制度です)。
  2. 適用には申告書への明細書の添付が必須
    税額控除の明細を確定申告書に添付し、適用を受ける旨を記載する必要があります。記載・添付が漏れると控除は受けられません。
  3. 「給与等支給額」の集計に注意
    役員やその親族などに支払う給与は対象から除かれます。また、助成金などで給与が補填されている場合は、その補填額を差し引いて計算します。集計範囲を誤ると控除額がずれるため、慎重な確認が必要です。

実務でつまずきやすいポイント(監修者より)

当事務所で申告をお手伝いしていると、要件は満たしているのに控除を取りこぼすケースを毎年見かけます。特に多いのが次の点です。

  • 役員・その親族への給与の除外漏れ:給与総額にうっかり含めると、控除額そのものがずれます
  • 助成金など補填額の控除漏れ:雇用関連の助成金を受けている場合、その分を差し引く必要があります。
  • 認定のタイミング:くるみん・えるぼしの上乗せは、認定の種類ごとに「適用年度中に取得」「年度終了時に取得済み」など条件が分かれます。
  • 申告書(明細書)の添付忘れ:要件を満たしていても、添付がなければ控除はゼロ。後からの修正も簡単ではありません。

賃上げの計画段階から、どの区分で・どの控除率を狙うかを設計しておくことをおすすめします。

 

よくある質問(FAQ)

Q. パート・アルバイトの給与も対象になりますか?

A. 賃金台帳に記載された国内雇用者への給与であれば、パート・アルバイトも給与総額に含まれます(役員やその親族などは除きます)。

Q. 教育訓練費を増やせば控除率は上がりますか?

A. 教育訓練費による+10%の上乗せは、2026年(令和8年)3月までに開始する事業年度(個人事業主は令和8年分)で廃止されました。それ以降に開始する事業年度は、中小企業向けで最大35%です。

Q. 賃上げしたのに利益が出ず赤字です。控除は受けられませんか?

A. その年度に控除しきれない分は、5年間繰り越して将来の黒字年度で使えます(繰り越すには明細書の提出が必要です)。

Q. 役員の給与を上げた場合も対象ですか?

A. 役員およびその親族などに支払う給与は、原則として対象外です。

Q. 助成金(雇用調整助成金など)を受け取っている場合は?

A. 給与に充てるために受け取った補填額を、給与等支給額から差し引いて計算します。判定と計算が複雑になるため、税理士にご相談ください。

 

賃上げ促進税制の活用は広島の吉村税理士事務所へ

賃上げ促進税制は、要件さえ満たせば賃上げと節税を同時に実現できる、中小企業にとって有利な制度です。一方で、2026年の改正で控除率が変わり、「自社の事業年度はどちらの区分か」「給与総額の集計」「中小・中堅どちらで申請すると有利か」「明細書の添付」など、実務では判断に迷う場面が少なくありません。

広島市安佐南区の吉村税理士事務所では、法人・個人事業主どちらにも対応し、会社設立・融資から日々の経理・節税までを一貫してサポートしています。「自社は賃上げ促進税制を使えるのか」「いくら控除できるのか」を知りたい方は、お気軽にご相談ください。

【執筆者】この記事を書いた人
執筆者:佐々木 笙
吉村税理士事務所のスタッフ。お客様に役立つ税金の知識を分かりやすくお伝えします。

【監修者】この記事を監修した人
監修者:吉村 匡史(代表税理士)
広島の吉村税理士事務所・代表税理士。特に広島での会社設立・創業支援に力を入れており、地域の起業家を全力でサポートしています。>>代表プロフィールはこちら


※本記事は2026年(令和8年)時点の情報をもとに、以下の資料を参照して作成しています。要件・控除率・適用期間は今後の税制改正により変更される場合があります。実際の適用にあたっては、最新の情報をご確認のうえ、税理士にご相談ください。

【出典】
経済産業省「賃上げ促進税制」https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/syotokukakudai.html
経済産業省「賃上げ促進税制ご利用ガイドブック(令和8年度改正後)」https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/pdf/pannfuretto08.pdf
国税庁タックスアンサー No.5927「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(中小企業向け賃上げ促進税制)」

 

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